アントフィナンシャル 感想
アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
- 作者: 廉薇,辺慧,蘇向輝,曹鵬程,永井麻生子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2019/01/25
- メディア: 単行本
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中国のIT企業といえば、個人情報の扱いに関する考え方が雑でそれ故に個人情報をフルで使ったビジネスを展開し成功を収めているという言説をよく聞きます。
この説が正しいかどうかは分からないが少なくともこの本を読めば、少なくとも個人情報の扱いだけが中国IT企業の発展の理由ではないというのはよくわかります。
この本の内容はアリペイを運営するアントフィナンシャルがどのように誕生し、現在に至るまでどのような発展をしてきたかを関係者のインタビューに基づいて体系的にまとめた本です。そして興味深いことにその発展の歴史をなぞるように日本のQRコード決済事業者がサービスを展開しています。そういう意味では日本でフィンテックに関わる人々は読んでおくべき本でしょう。
僕が一番面白いと思った箇所はアントフィナンシャルの理念に関して書いてある箇所です。
アントフィナンシャルの理念は既存の金融機関がコスト面から相手にできずにいた零細企業や信用力の無い個人、農村に資金を提供することである、といったことが随所に書かれていました。
社名のアントフィナンシャルというのはこのような一つ1つは小さくても集まれば大きな力を発揮する零細企業や個人を蟻に例えたものだそうです。
本全体を読んで思ったのは、日本にアントフィナンシャルほど高い理想をもって成長する企業が果たしてあるのかということです。もしかしたら存在していて恥ずかしがって面に出ていないだけかもしれません。そうであって欲しいと思っています。