鉄道と国家 感想
新書、鉄道と国家を読み終わったので感想を述べます。
本書は大きく分けて三つの要素で構成されていました。
明治期の鉄道黎明期、昭和期の鉄道拡充期、平成の不採算路線閉鎖期。です。
厳密には内容が重なっていたり、新幹線などこれら以外の要素もあるのですが時期で分断すると概ねこんな感じだったともいます。ここでは、それぞれの要素について感想を述べていこうと思います。
まず、明治の鉄道黎明期。この時期の主題は鉄道が明治新政府にとってどのようなものであったかということだと僕は感じました。
鉄道の主たる使命は大量輸送ですが、本書によれば初期はそこまで鉄道を用いた大量輸送は考えられていなかったようです。むしろ、大量輸送を最ものぞむ軍は軍用地予定地を鉄道に取られたことで鉄道建設に反対していたといった趣旨のことが書かれていました。本書によれば鉄道に当初求められていたのは大規模公共事業による国内へのアピールと外国への技術力のアピールが目的の大きな部分を占めていたそうです。
次に昭和の鉄道拡充期。この時期のエピソードは概ね我田引鉄という造語に集約できると思います。田中角栄の日本列島改造論のもと、鉄道が政治家にとってどのような存在であったかがよくわかるエピソードでした。現代を生きているからか、都会に住んでいるからか僕には鉄道を引くことにここまで必死になる気持ちが理解しかねます。
最後に不採算路線閉鎖期です。この部分で印象的だったのは鉄道というものはかくも採算を取るのが難しい事業なのか、という点でした。不採算路線をいかに閉鎖していったか、どのように閉鎖に対抗したかといった事柄が書かれていましたが、このとき国鉄は不採算路線の採算性を向上させる努力をしていたのでしょうか?この点に関しては本書で触れられていなかったのでなんとも言えません。
全体の感想
本書は鉄道に関する近代史をメインにしているのでしかないですが、諸外国の植民地政策における鉄道の意味や貨物を含む大量輸送の意義など僕が知りたかった内容が入っていなかった点が物足りなかったです。しかし、昔の人々の鉄道に対する思いは十分に盛り込まれており読み応えのある作品でした。
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